震災によって失われた3つの間 ~FUTURE CHANGE THE ABILITY~

今回インタビューさせて頂いたのは弘前医療福祉大学で救急救命士になるために努力している、ふたば未来学園高等学校3期生の遠藤匠さんです。

遠藤さんの目指した未来、その経過はなにか。

高校時代の探究について伺いました。

*******プロフィール*******
名前:遠藤匠(えんどうたくみ)

大学:弘前医療福祉大学
学部:救急救命学科

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○どんな活動を行いましたか?

子供達の運動能力を遊びを通して改善していく活動をしていました。

○どのような内容ですか?

私たちの探究は、遊びを通して運動能力を改善し運動する習慣を付けてもらうこと。
そして3つの間、遊ぶ時間・空間・仲間を作ることです。

○どのような結果がわかりましたか?

探究を終えて、これまで見えていない部分が見えるようになりました。例えば、スポーツ人口が減少している原因として、遊ぶ”時間””空間”仲間”という”3つの間”が不足しているということや、『スポーツをしたくて習い事をはじめたが辛くて辞めてしまう。』結果として新たなスポーツ人口を確保できていないことなど、課題の原因を探ると解決の糸口はいくつも見えてきます。さらに調べていくと、実は震災以前から福島県は体力テストの成績が低下していたが震災によって浮き彫りになってしまったということがわかりました。原因としてはゲームの発達などが挙げられますが、これは全国的にも同じ状況です。つまり、震災・原子力災害があった福島からこの状況を変えていけるのではないかと思います。 『福島から全国へ、福島から世界へ。』福島はその役割も担っていると思います。

○探究を行う中で何か問題点はありましたか?

大きく2つあります。1つは時間割の問題、もう1つは学習指導要領の存在です。

○それについての改善策はありましたか


1つ目の時間割の問題とは、そもそも小学校と高校では授業時間も違うため、なかなかベストな開始時間を見つけることができませんでした。そこで目をつけたのが水曜日の昼休み終わりの5限目の授業です。私達は水曜日の午後は未来創造探究の時間でしたので他の授業に影響せずに進めることができます。このことを小学校にお話ししたところ、FCAの活動がある日には時間割変更や清掃の時間を変更して下さり、活動を実現することができました。
 2つ目の学習指導要領の問題は、小学校では、文部科学省によって定められた学習指導要領というものに沿って授業が進められている為、私たちの活動を授業内で行うということはその分、授業が遅れてしまうということになります。そこで考えたのは、学習指導要領に基づいて活動を行うというものです。例えば、跳び箱の授業があるとします。私たちは、小学生が少しでも円滑に跳び箱の授業に入れるように、授業の導入の部分を担うのです。このことにより、小学校の授業を遅らせることなく活動を進めることができました。

○自分の探究を振り返って良かったこと悪かったことはありましたか?


良かったところは、小学生が楽しく運動している姿、そして笑顔を見ることができたことです。さらに、少ない活動ではありましたが小学生が私たちのことを覚えていて下さり、町内で会ったときなどに挨拶をしてくれることもありました。小学生と高校生との繋がりが生まれたと感じ嬉しく思います。私たちのFCAの活動を体験した子達が、数年後ふたば未来学園に入学して、教える立場になってくれたらいいなぁなんて思ったりもしています。

悪かったところは、子供達の運動能力が向上したのかを確認するためのデータをとることが出来なかったことです。小学校は6学年ありますが、『多くの子達に身体を動かすことの楽しさを知ってもらいたい。』という想いから、学年を絞らずに活動を実施しました。1年間継続した活動ですが、1つの学年に対して実施できた回数は多くて2回でした。このことから、運動能力向上のデータを取ることを断念しました。しかし、多くの子達に楽しく活動してもらうことができたので、その点では良かったと思います。

○探究を進めていく中で大変だったことはありましたか?

自分達は月に1回、小学生に対して体育の時間に運動を教える活動をしていたので怪我をさせないようにとても気を配りました。そのため、活動ごとに事前に小学校の先生と話し合いを進めて、どのような活動をするのかを共有し、当日には安全かつスムーズな活動を行えるようにしていました。
また、1つ1つの運動種目ごとに、『なぜ、この運動をするのか。』などの目的を定めていたので、対象の学年に合わせた活動ができるように活動内容はチーム内でよく考えました。
活動後には報告書を制作して小学校に提出するところまでを1回の活動としていたので、月に1度の活動でしたが、毎日忙しかったです。

○どういったきっかけで探究を始めましたか?

探究活動の中で、広野みかんクラブさんからお話を聴く機会があり、スポーツ人口が減少していることを知りました。さらに自分たちで調べてみると、震災以降、福島県の体力テストの成績が低くなっていることを知ったことがきっかけです。

○どのような機会があって探究が進みましたか?

いわきFCさんでの研修です。いわきFCさんは、サッカー場を開放して小学生以下の子供たちに遊ぶ場所を提供しています。自分たちが突然小学校を訪ねるのではなく、いわきFCさんの活動に参加させて頂き、子供達との触れ合い方を実際に体験しました。それに加えて、運動能力を高めるための神経筋生理学も勉強する機会を与えて頂いたので、自分たちの活動にも反映しました。

○この経験は今どのように活かされていますか?

現在、救急救命士を目指して短期大学に通っています。救命講習などで小学生や中学生、高校生を相手にすることがあるのですが、教えるときに興味を持ってもらえるような対応ができると思います。去年は新型コロナウイルスの影響でこのような活動ができませんでしたが、今後必ず活きてくると思います。
救急救命士として就職すると、救急車で子供を搬送する機会もあります。そのときにも安心させてあげられるようなスキルの1つになると感じています。

○探究を振り返って今ならどうしていますか?

自分たちの探求活動を振り返って今思うことは、”活動後の小学生の動き”を知りたかったです。自分達は、運動習慣をつけてもらうことも目標の1つであったので、活動を通して運動の楽しさを知って運動習慣がついたかどうかを調べたいです。活動内での遊びを休み時間などに小学生だけでもできるような内容にしていたので、その効果がどう出ているのかをデータとして出せるともっと良い探究になったのではないかと考えています。

まとめ

今回のインタビューを通して感じたのは、遠藤先輩は地域との繋がりをとても大事になさっていたということです。地元に根付いたクラブチームの活動に参加したり、地元の小学生達に運動の大切さを教えること、習慣化するということ、これは容易なことでは無いと私は思います。現状に満足せず、自ら未来を変えてやるという熱い思いが伝わりました。ぜひこの素晴らしい探究活動を引き継いでほしいです。

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